棚卸資産について

山本公認会計士・税理士事務所

2014年06月10日 07:10

 最終仕入原価法は、期末に最も近いときに取得した棚卸資産の一単位当たりの取得価額をもって期末棚卸資産の一単位当たりの取得価額とする方法である。法人税法が定めている棚卸資産の評価方法の一つである。
 最終仕入原価法は最終で仕入れた原価がそれ以前で仕入れた原価よりも上回ってしまったときに棚卸資産が仕入原価よりも上回って評価されることにつながるおそれがある。このため、現行の会計制度が取得原価主義の枠内において形成されていることを考えれば、最終仕入原価法で評価した棚卸資産は取得原価より上回るおそれがあるため、会計の面からは最終仕入原価法は認められない。
 ただし、棚卸資産の受払について継続的に記録していない場合は、棚卸資産の評価としては最終で仕入れた商品単価に期末で実地棚卸により把握した数量を乗ずることで期末棚卸資産を評価することになる。すなわち、最終仕入原価法は、棚卸計算法と結びつく評価方法であるといえる。

 一方、継続的に棚卸の受払を記録していく方法を継続記録法というが、この場合において払出価格をいくらにするかという方法に個別法・先入先出法・平均法・売価還元法がある。
 売価還元法に関しては、期中においては払出単価をその都度把握する必要がなく棚卸の数量の受払のみを把握していればいい。
 
 期末において実際の棚卸資産の数量を確認する必要があるため、継続記録法を採用している場合であっても実地棚卸をする必要がある。そして、実地棚卸において把握した棚卸資産の数量と帳簿の数量の差異を把握し、差異分析を実施する。この差異分析により、棚卸資産が盗難に遭ったのか、私的流用されているとかの原因が追求できる。
 一方、棚卸計算法を採用している場合においては、帳簿によりあるべき期末棚卸の数量がわからないため、実際に売上のために出荷した棚卸であるか、盗難のための棚卸であるのかが把握できない。
 経営管理の面からも継続記録法により棚卸資産の数量を把握することが望ましいといえる。

 法人が棚卸資産について、その評価方法を届け出なかった場合、法人税法上は、最終仕入原価法による取得原価によって評価額を計算することになっていることを考慮すると、法人税法上は棚卸計算法を採用することを前提としていると考えられる。
 会計的には、棚卸資産については継続記録法を前提として個別法・先入先出法・平均法・売価還元法といった原価法が認められていることを考えると、最終仕入原価法についても例外的に認めるということにすべきであると考えられる。また、帳簿の一種である在庫の受払簿を間接的に作成しなくてもいいと認めることにつながるため、最終仕入原価法を認めることは望ましくないといえる。あくまで、重要性の乏しい棚卸資産についてのみ最終仕入原価法を認めるべきであろう。


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